あれ?

ショウシャ

飛行エリマキ

猫が夜に何をするのかって全く知らなくて、こんなカラカラの頭じゃあまあ想像も及ぶことはないんで金輪際考えないようにしようと思う。エリマキトカゲはあのマキのエリで高く空中を飛ぶもんだとおれは大人になってからも信じ続けてたけど、近所のコンビニの…

雑記

しばらく息を潜めていた雪が思い出したかのようにごうごう降り始めたがバイトがあるので外へ出る。 全然来なかった路面電車に乗り込んで窓の外を見る。こんなに雪が降っていても、自転車を漕げる人がいる。こんなに雪が降っていても、ミスドに行く人がいる。…

ため池

実家のすぐそばには比較的大きなため池があった。湧水をせき止めて出来たものらしい。春にはため池のまわりで満開になった桜が水面に浮かび、冬には気温が池を凍らせた。水面は大きく空と木々を映す。まれにカモの群れがきては遊びながら泳ぎいつのまにか消…

「店長ぉ〜」「はい?」「これ間違ってますよ、ソースがソールになってます」「え?なに?………本当だ…誤植だ誤植…よく気づいたね」「気づくんで私」「何スカ?何の話スカ?」「メニューの打ち間違い、店長のミス」「ミスって言わないでよ…ミスだけど…」「あ〜…

父親

父親があまり好きではない。思春期の領域ではない。別にパンツは一緒に洗濯されても構わない。ただ父親があまり好きではない。 父親は昔から一貫して、俺がこの家を仕切ってんねんぞという姿勢を崩さないし、俺が正しいから俺を尊重しろという気持ちが根底に…

ひびきちゃん

ひびきちゃんは私の親友だった。親友だった?親友だった、保育園の頃の話だが。もう私というのはひびきちゃんが大好きで大好きで、ひびきちゃんが来ない日の保育園は何の意味もないと子供ながらに思っていた。私の誕生日に1月と1日を足せばひびきちゃんの誕…

「じゃ…花屋で花買って…いややな 花買うん 恥ずかしいわ」「んん!?ふぁんふぇ!?」「いや…私花屋で1人で花買うたことないねん」 「え、全然大丈夫やよ おばあちゃんしかおらんで花屋なんて」この現在地ってあてになりますかね 「甘いもの食べたくな~い?…

いつか私の山椒魚

いつか私は山椒魚を借りた。井伏鱒二の、文庫版の。 高校に入って数ヶ月経って、クラスメイトと談話ができるようになった頃。 放課後になってそれを読んで、机の上に置いたまま私は席を離れた。教室から少し離れた廊下で誰かに会って、笑える話をした。 戻っ…

思っていたこと

親が死んだら基本泣くじゃないですか人って。でも親って愛も憎しみも抱く存在ですよね。最後なんで泣くんでしょうか?特段 虐待やら浮気やらそういった顕著なマイナス行動を取ってきた親でなくても、あの発言あの行動は許せないとかありますよね、自分の価値…

混ざり合い

「痛いのは嫌だな。痛いのはやだよ大吾くん。やっぱりわたしは痛いとか、苦しいとか、そんなものは知らないでいるべきだと思う。闇がなければ光はない、悲しみがなければ喜びもない、そんなことないって。対比して強烈にするよりも、当たり前に溢れる存在に…

あたしは自然です

あたしの話をします。あたしは幼少の頃から忌避されてきました。あたしはまがまがしいんだそうです。でもあたしには本当に意味がわかりませんでした。あたしが、両親、妹、近所の人のことを思ってすることが、彼らには恐ろしいことだと。言われ続けましたが…

夢でよく行くイオン(夢日記)

夢の中でよく行くイオンがある。今までの人生でもう5回くらいその夢イオンに行っている。もちろん現実には無いイオンである。1フロアが信じられないほど広くて高く、それが3階建てになっている。 デザインは近未来チックだ。どうしてそこをイオンと認識して…

LETTER:蛇→うちあけ 私

こんにちは。返事が遅くてごめんなさい。元気にやってますか?元気でいてほしいなあ。わたし、その番組みたかもしれません。宮くんの。大蛇の体長を測りにいくやつじゃなかったかな?わたしそれ、すっごく笑ったんです。あれ、宮くんだったんですね、つくっ…

なんにもない日

「人間は1日に十万回思考するって」 「ん?」 「知ってた?」 「…」 「…」 「一回って、どっからどこまで。」 「?さあ?」 「どこでもいいのかな」 「んー?」 「そしたら俺は断固として、一日一回しか思考してませんって言い張るな。」 「あー、わたしも!…

たかしへ

戸棚におやつのかりんとうが2袋はいってます。島崎さんがくれたちょっといいやつだからおいしいと思うよ、とっても。今日お母さんはその島崎さんとごはん食べてお話してくるから、夜ごはんに間に合わないと思います。コンロの上にカレーと、冷蔵庫にたまごあ…

青い欠陥

「冷たい」 「へ?」 「冷たい」 「…水?」 「態度!」 「あー…氷。」 「連想ゲームじゃない!バカ!」 「…なに。え、なに?」 「ほら!そういうとこ!!私今、どうしてる!?」 「え、…怒ってる。」 「わかるじゃん!わかるんじゃん!!じゃあなんで?」 「…

やさしい朝

「ん…………」「おはよ」「……びっくりしたぁ……」「は?」「なんでいんのかとおもった…」「寝ぼけがすごいな」「ん〜〜……なんじにおきた?」「いや、今 あんたが起きる直前に起きたよ」「え〜〜……いまなんじ……」「8時20分」「え〜……………」「…………」「………………はぁ」…

独白

認識できない、あ、これ、なに?あれ、は…なに?どうして。これは…わたし、が引き起こす、し、たのだろうかいやそんなはず、ねえ?はははは。これは、嘘…ははははこれからどうしようどうしようどうしようこんなに真っ赤でどうしようはは、ははははっ 勢いよ…

高校1年から最後まで同じクラスだった女の子の友達がいた。1年の時は仲良くなかった。2年の時に仲良くなった。3年の秋、初めてその子の家へ行った。なにも目的はなかった。昼ごはんも食べていなくて、なんにもない、白ごはんしかないって彼女が言いながら棚…

LETTER: ツナマヨ→蛇 僕

こんにちは。返事が返ってきてよかった!僕は安堵しました。ツナマヨの話なんて、しましたね。僕はあいつだけがあの学校の宝だと本気で思っていました。宮とは今でも年賀状を送り合う仲です。送り合う程度です。宮は今テレビのディレクターをやっているらし…

LETTER: 信号→ツナマヨ 私

どうもお久しぶりです。手紙、ありがとう。君のお手紙は実家に届き、母から私の元へきちんと送られてきました。最初は唐突な手紙に少し慄きましたが、読んでいるうちに嬉しくなりました。やっぱり手紙はいいものですね。文明の遺産です。あ、でもちょっと私…

LETTER: 信号 僕

お久しぶりです。僕を覚えてますか?本当のことを言うと僕は君を覚えていなかったのですが、実家がリフォームするというので、秘められし押入れをガサ入れしていたら、君との文通の痕跡が出てきまして、あー、これはこの文通もリフォームしなくては、と思い…

夏の窓から風は吹く

「いつか覚えてないけど」「ん?」「ドラマを観たの、少しだけ古いドラマ」「うん」「なんだっけな……忘れちゃったけど…音楽はすべての芸術の上に立つって、そんなセリフが出てきたの」「うん」「別に重要な人の、重要なセリフじゃないんだけど。なんか、胸に…

TEL:遠距離 m

もしもし?ユキ?あ、今よくなかった?あ、良かった。バイト?なんだっけ。ああ、イタリアン。あ、あの写真のやつか。あそこお洒落だよな。って俺は思ったけど。あ〜、慣れちゃうか。だよな。ん?俺?いや大学生だけど?はは。ああ、バイトね。 ん〜〜…まあ…

TEL:遠距離 f

はーい。うん。ん?ううん、ちょうど今帰ってきたところだから、へいき。え?そうバイト。イタリアンイタリアン。そう〜、前送ったとこね、覚えてんだ。あー、まあ結構お洒落かもね。いやもうバイトでずっと行ってたらさあ、そう、見慣れちゃうもん。わかん…

ばいばいの前に夢を

「最近へんな夢しか見てないんよ」「へんな夢って、どんなん」「わからん」「は?なにそれ…」「へんな夢だって感触と、空気は確かに体が覚えてるんだけど、それがなんの夢だったかは全く覚えてないんよ」「ええ?あ〜…まあでも夢なんて覚えとらんわな、起き…

正夢はお皿を拭いて

「もうすっかり春ですね」「え?」「え?」「9月」「え?」「今9月ですよ」「え?今あたしなんて言ってました?」「もうすっかり春ですねって」「え?なんでそんなこと言ったんですか?」「知りませんよ、君のことは君にしか」「え〜、綺麗な言葉喋りますね…

近づく

「あ、待って…」 「ん」 「うーん…ちょっと…案内板…」 「あそこにあるよ」 「あ、良かった…助かります」 「俺も高円寺来たことないんだよね〜〜 」 「ですよね〜〜、…。」 「…」 「うーん…」 「…」 「………この現在地ってアテになりますかね?」 「んん?なん…

ふたりの社窓から

「一人でいるのは寂しいじゃないですか?」「うん?うん。」「だからわたしね、最近は家に帰れないんですよ。」「えっ?帰ってないの?」「うん、あのね、足が帰路につかないんですよ。そうしようとすると、フラフラ、ガクガク、しちゃうんですよ。」「それ…

完璧ミスった

「完璧ミスった」 「なに、どした」 「え?」 「え?いや完璧ミスったって、何を」 「えっ? いま口んだしてた?」 「えっ、出してたじゃん え、無自覚なの?なに?怖いんだけど」 「かんっぜんに無意識だったわ…え〜これやばいよね?なんていうの?夢遊病み…