LETTER: 信号 僕
お久しぶりです。僕を覚えてますか?本当のことを言うと僕は君を覚えていなかったのですが、実家がリフォームするというので、秘められし押入れをガサ入れしていたら、君との文通の痕跡が出てきまして、あー、これはこの文通もリフォームしなくては、と思いまして、お手紙を書くことにしたんです。当時のアドレスにそのまま送ったので、これが届かなければ、仕方がないのですが。
中学二年の頃でしたね。僕は当時毎日しょうもなすぎて文通相手をインターネットで探したんでした。インターネットがあるのに、文通をやりたがるところが、僕の青い部分ですね。でも応じた君もなかなかのものだと思いますよ、今になって考えてみれば。
当時の文通の内容を、僕はほとんど覚えていません。自分で誘っておきながら、なんて奴なんでしょうね。すみません。
ただ一個だけ覚えてるんですが、君は歩行者信号が好きだって書いていませんでしたか?あの信号の人が、紳士な格好をしてるところが、微笑ましくて好きだと言っていましたよね。僕はあの時、よくみてるなあとしか思わなかったんですけど、君は結構面白いことを言う人でしたね。
信号のことを言うと、僕は最近横断歩道を渡る時、青い光がチカチカするまで、渡るのを待つようになりました。チカチカと、信号が「急がないと危ないですよ」って言うので、「平気だよ」って僕は心の中で言って、悠々と歩くのが楽しみになってしまったんですよね。
世の中に溢れる 光の点滅というのは、僕を知らない誰かからの、危険を知らせるやさしいメッセージなんだなって最近思うようになったんですよね。ハザードランプとか、インターホンとか、うん、挙げると意外と少なかったんですけど、僕は点滅の奥に人がいるんだって思って、嬉しくなったんです。
信号好きの君としてはどうですか?
今でも信号の紳士は、好きですか。
届かなかったらどうしよう、笑える。
届いたら、返事くださいね。この際、ま、とか、ぱ、とかでもいいんで。でも、封筒から便箋出して開いたら ぱ だけだったら、相当ウケますね。
リフォーム出来たのか、しっくりこないですけど、とりあえずはこれで。書くと思い立ってから、いろんなことを書こうと考えていたのに(仕事とかペットとか)、結局信号の話しか書けませんでした。筆下手(?)なのは直らなかったです。
あ、今朝近くの保育園でうんどうかい、やってて。赤組がんばれーって思ったんですけど。仕事終わって帰ったらもうとっくにうんどうかいは終わってて、赤組が勝ったのかはわからずじまいになったのが、悲しかったです。
またどうでもいいことをなぜか書いてしまった。君にはそういう話をしたくなるんですかね。だから文通の内容も忘れてしまったんですよ、きっと。消すのも面倒だから許してください。
じゃあ。