あれ?

ショウシャ

いつか私の山椒魚

いつか私は山椒魚を借りた。井伏鱒二の、文庫版の。

 

高校に入って数ヶ月経って、クラスメイトと談話ができるようになった頃。

放課後になってそれを読んで、机の上に置いたまま私は席を離れた。教室から少し離れた廊下で誰かに会って、笑える話をした。

 

戻ってきた。教室には誰もいなくなっていた。帰り支度をしに席に戻る。

 

私の山椒魚がひっくり返っている。

表紙を上に向けて席を離れたのに、今は裏表紙が上向きになり乱雑に置かれている。

ああ誰か、見たんだ。この本どんな本なんだって、裏のあらすじが見たいって、触ったんだ。

 

大きく開けられた窓から風が入り くすんだクリーム色になったカーテンはバサバサ言う。グラウンドの音と、楽器の金属の音がかすかに同時に聞こえてくる。

 

私は部活に入らなかった。だから私は帰りは1人になる。今、私は部外者だ。学校にいるのに。いるけど。

 

ひっくり返された山椒魚だけは私を部外者とは言わない。山椒魚をひっくり返した人はなんて言うだろうか?ひっくり返したのは誰なんだろうか?

大きく気持ちが盛り上がったけど、もう期限だから返しに行かなくちゃならない。あのキツネ目の感じの悪い図書の女に山椒魚を渡さなくてはならない。

 

辟易しながら本を掴み図書室を目指した。

思い出の中で顔のわからない誰かがずっと、山椒魚の裏表紙を読んでいる。

 

 

 

 

思っていたこと

親が死んだら基本泣くじゃないですか人って。でも親って愛も憎しみも抱く存在ですよね。最後なんで泣くんでしょうか?特段 虐待やら浮気やらそういった顕著なマイナス行動を取ってきた親でなくても、あの発言あの行動は許せないとかありますよね、自分の価値観があれば。
人間関係って結局 自分にとって相手の好きなところ良いところ、嫌いなところ悪いところがあってどちらも抱えつつ それらの割合で、自分の基準をもって判断して付き合ってくもので、それは親でも同じで。親と子の関係でも絶対生まれるし分かり合えない部分って。親と子だからこそ。それはいいんですよ。

問題は最後の別れの時なんで悲しくて泣くんですかっていう… なんでプラスの存在として扱うの?プラスマイナスじゃん。親。いや、いい思い出、親が死んだ時のこと考えたらゾッとすることも、いくらでもあるんです。でもその、数年前の私が、親に言われたことややられたことで、ああ、これはもう…ダメだ…と閉じた瞬間や傷ついた瞬間があって(理解しあえない部分があると気付いた時)、もちろん今はそれを引きずってはいないけど(その感情のまま生きていないけど)、でもそういう自分はいたわけじゃないですか。
親を許容できない自分が、確実にいつかの私として存在していたわけじゃないですか。
最後の日に私が お母さんお父さんありがとう親不孝でごめんねと泣いてしまったら、その、いつか存在していた私はどうなるんですか? そのいつかの私は間違っていたことになるんですか。親の最期の瞬間の、その近辺で抱いてた感情を 私のそれまでの人生の総意として、別れの時に送るんですか。
それまでの私は親に対してさまざまな場面でさまざまな感情を抱いてきたのに最後には忘れて 感動的に別れるんですか。酔ってませんかそれ。泣くために泣いてるっていうか…なんていうのかなあ、マジじゃねえじゃんっていう。
マジの感情って本当に複雑で入り乱れてて、結果行動に起こせないんじゃないですか。嬉しいも悲しいも寂しいも楽しいも幸も不幸もあっていろんなベクトルがありすぎて逆に静止しちゃうんじゃない?って、それが正解じゃない?って思っているんですけど。

親が死んで、はい振り返り、この人のこういうところが好きだったありがとう、これは許せなかった傷ついた、はい。総括。
でいいんじゃないですか。

うん…なんかまとまってないですけど。私も書いててぐるぐるになってしまってわからなくなってきてるとこもあるんですけど。
とにかく気になってるのは あらゆることに過去からの時間の積み重ねが存在していて今発現しているのに、なぜ、それを忘れて最後とる行動を それ にしちゃうんだって。
わたしはいつかのわたしを忘れたくないんです わたしはいつか、そのわたしだったのに

成長するとか 経験で変わるとか そういうことじゃなくて… 少なくとも自我が芽生えててその時はその時で自分の生き方を定めていて そこで親に傷ついて  
その先、私が変わったら、その時の自分は間違っていたことになるのかな…
わたしはそれを飲み込めない。

てことで

もちろん、他人の人生なんてわからないので、泣くことを否定したいわけじゃないです。ただわたしの、飲み込めないことってだけで


でもここまで書いて思ったんですけど葬式で泣いてる人って死んだ人のこと その命や人生を想って泣いてるんですかね。そうなると結局わたしは自分のことしか考えてないクズなんでしょうか。ハハー

わたしはわたしで手一杯なのにな


混ざり合い

「痛いのは嫌だな。痛いのはやだよ大吾くん。やっぱりわたしは痛いとか、苦しいとか、そんなものは知らないでいるべきだと思う。闇がなければ光はない、悲しみがなければ喜びもない、そんなことないって。対比して強烈にするよりも、当たり前に溢れる存在にするべきだよこの世の中で自分が享受したいものは。ね。

でも最近こうも思う。全部あいまいになればいい。暗さと明るさが分断されなければいい。痛いと気持ちいいが一緒にいればいい。悲しいものと、嬉しいものは、離れることなく一緒にいて、同時に感じられればいい。全部別々なんかじゃない。別々なんかじゃないよ。わたしのそばにはいつだって、全てが混ざり合ってまとわりついているんだよ。

わたしは理由なく死にたいな。麗らかな死にしたい。苦しむ黒い死にはしない。誰かに見守られて安らかに微笑んで死ぬのもわたしの好みじゃない。うたたねしてた、とか、ひざの裏がどうしてもかゆい、とか、そんな気分で死にたいの。あっ 、て。本当に、あっ、て言う間に、死ぬのがわたしのいつかの未来。それは明るくて暗いし、暖かくて寒いの。

ね、大吾くんはどうやってホームランを打ったの?」


帰り道 マックの店内で部活帰りの彼がチキンクリスプを2個食べてるのをまじまじと見てしまった。坊主頭を撫でてる彼に今すぐ駆け寄って、これ全部本当に口に出したら、彼は胃の中のもの、吐いちゃうかな。ちょっとそれはいいね。


希望だ。

あたしは自然です

あたしの話をします。あたしは幼少の頃から忌避されてきました。あたしはまがまがしいんだそうです。でもあたしには本当に意味がわかりませんでした。あたしが、両親、妹、近所の人のことを思ってすることが、彼らには恐ろしいことだと。言われ続けましたが意味がわかりません。今でもわかりません。あなた、呼吸をすることで、周りの人から嫌われたら、やめることできますか?やめられないし、やめる気も起きないでしょ?あたしの思いはそれなんです。

猫がいました。ノラ猫です。妹はたいそう可愛がってました。両親もかわいいねって、言って、妹と一緒に道へ出て、撫でていました。でも飼うことは許しませんでした。妹は毎日おねだりしてしまいに泣いて泣き叫んで、そのうち眠るを繰り返していました。あたしは思いました。妹かわいそう。こんなに好きなのに、一緒にいたいのに。あたしは猫をさばいてもらいにお肉屋さんに猫を連れていきました。お肉屋さんに、さばいてくださいって言ったら、眉を八の字にしてたなあ。そのうちお母さんが来てぎゅうぎゅうあたしの手を引っ張って家に帰らせるんです。猫はさっさとどこかにいっちゃいました。

手がジンジンするけど、あたし頑張って言いました。妹、あのねこ好きなんだから、一緒にいたほうがいいよ。一緒になったほうがいいよ。お母さんはふるふる声を震わせながら 、やめなさいって言ってました。何を?何をやめる?今もよくわからない。

あたしは家族を愛しています。幸せになってほしい。世界中の人を愛しています。平和でいてほしい。あなたたちのためならなんでもできる。そういうものでしょ人間って?

あたしは普通です。

あたしは自然です。

 

 

夢でよく行くイオン(夢日記)

夢の中でよく行くイオンがある。今までの人生でもう5回くらいその夢イオンに行っている。もちろん現実には無いイオンである。1フロアが信じられないほど広くて高く、それが3階建てになっている。

デザインは近未来チックだ。どうしてそこをイオンと認識しているのか未だによくわからないほどイオンとかけ離れている内観なのだけど、とにかくイオンなのだ。ピカピカしている。光ファイバーが通りまくっている。エスカレーターがアホほど長い。そしてま〜〜あ人がいない。異質な空間である。

 

今日昼寝をしていたらまたイオンに行っていた。いつもは1人で行くのだが、今回は両親と姉とイオンにいた。とりあえず別行動で、と言って、私は姉とまわりはじめた。フードコートにいく。美味しそうなクレープ屋、ケーキ屋、が店員も客もいないまま立ち並んでいる。そこを抜けると右手にアイス屋を見つけた。あ、食べたい。左手を見る。客用のイスが10ほど並んでいて、その全てに人が座っている。みんなこっちを見ている。体が透けている…というか水彩絵の具で淡くカラフルに色付けされている。人間のカラーではない…店員は相変わらずいない。なんか怖くてゆっくり逃げ出した。

いつのまにか3階のホラー館に姉といた。入り口から数歩歩いて…怖くて目を瞑って振り返って逃げる。姉が私を止める。ニヤニヤ笑っている。振り切って私はホラー館を出た。

フードコートに行く。椅子に両親が座っていたのでわたしも座る。姉がピザを1枚持ってきたので両親は喜んだ。私は、「あ、ピザ、サプライズで買って、家に置いてあるのにな…」と思った。言えないまま、そのピザを食べた。

 

ところで目が覚めた。なんだこの夢。

 

夢で知らない空間にいるのは、なんなんでしょうね。私の脳から生み出されているのは間違いないんだろうけど、よくこんな空間がつくれるものだといつも不思議です。そんで本当、ちゃんと反芻しないとすぐ忘れてしまいますよね?なんで?夢について解明したいですね。

 

ちなみに昨日はAVをツタヤから借りてきて同居人が帰って来る前にこそこそ見るっていう夢を見ました。すごいハラハラしてました。


LETTER:蛇→うちあけ 私

こんにちは。返事が遅くてごめんなさい。元気にやってますか?元気でいてほしいなあ。


わたし、その番組みたかもしれません。宮くんの。大蛇の体長を測りにいくやつじゃなかったかな?わたしそれ、すっごく笑ったんです。あれ、宮くんだったんですね、つくってるの。さすがです。さすがです、って、伝えてほしいです。


ねえ、ヘビなんて!飼っていたのですね!奇想天外。キミはいつも意外な一面を見せてくれていたものですけど、今でもそんな節があるなんて。ちょっと、感動しました。

体温が苦手なのは、これから変わっていくでしょう。キミが望むと望まざるとに関わらず。だってほら、もしキミが北極にいたとしたら、ヘビに抱きつくよりも誰かに抱きつくことを望むでしょう?寒いんだから。そうやって変わっていくものですよ、きっと。


ねえ、今回返事がすごく遅かったでしょう?(ごめんなさい)

それで、どうしてわたしたちのあの頃の文通が終わったのか、思い出せますか?

わたしは覚えてるんです。わたしが返事を出さなかったからです。だから途絶えたんです。

きみはわたしとの文通は、どうでもいいことを話したくなったと、書いてましたね。

わたしは、逆で。わたしは、なぜか、きみになにを書いて送るかを、慎重に選んでいたんです。言葉を、話題を、気持ちを、毎度。

考えすぎて、考えすぎて、何日も過ぎてしまった。そしたら、過ぎすぎて、過ぎすぎて、もう手紙なんて送ったら、きみがしらけてしまう、しらけている顔が見えるって、思ったんです。そうしたら怖くて送れなくなっちゃった。ごめんなさい。気にしてないかな。

わたしきみには、変な話できなかったです。もちろんそれは自分の基準に照らし合わせた時の、変な話、だけど。きみに、変な話をしてしまったら、どう思われるか……わたしの好きな時間をわたしが壊しちゃうかもって思ったら怖くって。今思うとそれこそ変な話ですね。

きっと、きみとあの頃から文通をずっと続けてるわたしも、どこかの世界線にいますね。いいなあ。



わたし、

きみには嫌われたくなかったの。

なんにもない日

「人間は1日に十万回思考するって」

「ん?」

「知ってた?」

「…」

「…」

「一回って、どっからどこまで。」

「?さあ?」

「どこでもいいのかな」

「んー?」

「そしたら俺は断固として、一日一回しか思考してませんって言い張るな。」

「あー、わたしも!」

「そうしよう、俺たちは反旗をひるがえそう。」

「ひるがえすひるがえす!」

「それを言い出したのは誰なんだ?」

「?ネットにあったから。」

「誰だろう」

「国家とかじゃない?」

「じゃあ、国家に反旗をひるがえすことになるな。」

「おーっ!こわい!危険分子じゃん!」

「どうする?国を追われたら」

「えー、えー、どうしっか?」

「俺はとりあえず、台湾でラーメンが食いたいな。」

「あー!わたしもモアイが見たい!」