あれ?

ショウシャ

たかしへ

戸棚におやつのかりんとうが2袋はいってます。島崎さんがくれたちょっといいやつだからおいしいと思うよ、とっても。今日お母さんはその島崎さんとごはん食べてお話してくるから、夜ごはんに間に合わないと思います。コンロの上にカレーと、冷蔵庫にたまごあるから、夜はそれを食べてください。


それから、蹴ってますか?

人生はとても短いから、せまりくる理不尽や不愉快には蹴りを入れて入れて入れまくって生きていかないと、爽快な日々を過ごせませんよ!


母より

青い欠陥

「冷たい」

「へ?」

「冷たい」

「…水?」

「態度!」

「あー…氷。」

「連想ゲームじゃない!バカ!」

「…なに。え、なに?」

「ほら!そういうとこ!!私今、どうしてる!?」

「え、…怒ってる。」

「わかるじゃん!わかるんじゃん!!じゃあなんで?」

「え、だから…なにが言いたいのかわかんねーって、さあ」

「彼女が怒ってるのに、なんで焦らないの?昨日もそう、てかずっとそう!」

「はあ…?」

「はあってなに?こっちだから!」

「いや、こっちだって…」

「私が悲しそうな時なんでなにも言わないの?私が教室で一人でいる時なんでそばに来ないの?」

「はあ?」

「私が読んでた本はなんていうの?私の好きな花は?知ってる?」

「あのさ…」

「ほら、だから冷たいって言ってるの。冷たい。あんたは冷たい。」

「…俺はお前の望み通りになれば良いわけ?お前に詳しくなれば良いわけ?それは違うと思うんだけど。お前、そんなわがままだっけ?」

「…違うでしょ…」

「…なんだよ…はっきり言えよ…」

「わた、私が…悲しい時あんたはなにを考えてる?私が、笑ってる時…あんたはなにを見てる?」

「…」

「どこにいる?なんで私の彼氏に…いや、そうじゃなくて…」

「なに…」

「あんた、私に…私に、興味ある?私がなにを思ってるか、一度でも、想ってみたことある?」

「…」

「わからないんでしょ。”私がなにを思っているか”。私は…なんで…」

「…」

「…あんたは、自分以外のものになに一つ興味がないのね。」

「…そんな」

「ちがう、自分にも興味がないんでしょ。だから私がどんだけあんたのことを、…」

「…」

「ねえ、わかる?私はずっと」

「…」

「さみしいんだ」

 

やさしい朝

「ん…………」


「おはよ」

「……びっくりしたぁ……」

「は?」

「なんでいんのかとおもった…」

「寝ぼけがすごいな」

「ん〜〜……なんじにおきた?」

「いや、今 あんたが起きる直前に起きたよ」

「え〜〜……いまなんじ……」

「8時20分」

「え〜……………」

「…………」

「………………はぁ」

「………………」

「………………」

「いや、起きよ。起きよ、おら、起きて起きて」

「あ〜〜……」

「ほらほらほら!」

「あ〜やめて〜〜やめて〜〜おきるから〜〜」

「こんままずるずる寝てたら遊ぶ時間が減る!」

「わかったからあ〜〜〜〜…っし」

「朝食べる?なにがいい?」

「え、なんかあんの」

「パンと〜ヨーグルトと〜バナナと〜パン」

「あ〜〜じゃ、パン。ジャぱん。後者の。」

「焼きたてじゃないジャぱんだけどいい?」

「焼きたてじゃないジャぱんでいーよ」

「あい」

「牛乳は?ぎうにう。」

「ないで〜〜…あ、ある?ないで〜〜す」

「買ってきて」

「甘えんなよ?買いにいけ?」

「ちぇっ」

「人んち泊めてもらってその態度か?ほら?」

「ひ〜〜すいませ〜〜ん」

「ナメてんなぁ…バターいる?」

「いらにゃい」

「えらいね」

「えらいの」

独白

認識できない、あ、これ、なに?あれ、は…なに?どうして。これは…わたし、が引き起こす、し、たのだろうかいやそんなはず、ねえ?はははは。これは、嘘…ははははこれからどうしようどうしようどうしようこんなに真っ赤でどうしようはは、ははははっ 勢いよ勢いなの意図していないの 戻らない?戻らないのかしら時間って  じかんはもどらないのかしら ねえ?ねえ?かみ?さま?いえこれからのことを考えなくちゃ まず 居場所を見つけなきゃ 居場所が ないから わたしに居場所なんて できるのかな わかんないけど 居場所がほしい それから ここ 掃除 しなきゃ 去るときは 来る前よりも綺麗にしなさいって 言ってた 誰かが だれだっけ………… わたしも汚い 洗わなきゃ  だってこんなに  手も足も髪も真っ赤で  あ なんでこんなにぐしゃぐしゃなんだろ あ シャワーが でてる ずっと なんで あ こいつ も真っ赤だ 真っ赤に 沈んでる 頭が くぼんでる 口から でてる 真っ赤にどんどん真っ赤になったのに沈んでる  

綺麗…………

高校1年から最後まで同じクラスだった女の子の友達がいた。1年の時は仲良くなかった。2年の時に仲良くなった。3年の秋、初めてその子の家へ行った。

なにも目的はなかった。昼ごはんも食べていなくて、なんにもない、白ごはんしかないって彼女が言いながら棚を漁っていて、安いたらこスパゲッティを発掘して2人分作ってくれた。こたつに並んで食べながらテレビを観ていた。バイキングの坂上忍を観て少しイラッとしながらこの時間を過ごすのが好きなのと彼女は言った。

食べ終わってもなにもすることがなかった。そのうち午後のロードショーが始まった。わたしたちは相変わらず並んで座ったまま、ぼーっと午後のロードショーを観ていた。彼女の飼っている、まるっと太った猫が部屋に入ってきた。抱き抱えたら嫌われた。カーテンの裏に隠れてもう出てこなかった。

わたしたちは映画にまったく集中していなかった。けれどもわたしはその映画のポイント部分ばかり掴んで観ていたのであらすじが把握できていた。彼女が なんでこの人拷問されてるのと言った。 前スパイをやってて、で始末されたはずなんだけど、死ななくて、でも記憶を失ってて、今普通の人として暮らしてたんだけど、それがバレちゃって、また始末されそうになってるの。

なんでそんなにわかってるの?と彼女は笑った。猫はいつのまにかいなくなっていた。

恋する惑星をそのまま観た。ラスト、なにこれ?って文句を言って終わった。中国人って理解できないね、って彼女が言った。わたしの制服はくちゃくちゃになってしまっていた。部屋はもう全容がみえない、夜だった。

彼女の姉と姉の彼氏が東京から帰ってきた。結婚式に出席するための服を買ってきたと言った。ZARAのワンピースをあてがって、彼女の姉がくるりとまわった。

彼女の姉の彼氏が車を出して、私を駅まで送ると言ってくれたので、4人で車に乗った。車の時計は狂っていた。

わたしは脳内で、こたつに並んでテレビを眺めるわたしたち2人の後ろ姿を、いつまでも思い描いていた。


LETTER: ツナマヨ→蛇 僕

こんにちは。返事が返ってきてよかった!僕は安堵しました。

ツナマヨの話なんて、しましたね。僕はあいつだけがあの学校の宝だと本気で思っていました。宮とは今でも年賀状を送り合う仲です。送り合う程度です。

宮は今テレビのディレクターをやっているらしいです。しかも、冒険するような番組?この間はロケで足元を大蛇がすり抜けて、その瞬間、宮は初めて走馬灯を見たそうです。そこでみるのかよ。


あ、僕のペットは、ヘビです。ベッキーと一緒です。タマゴヘビ、飼ってるんです。なぜ飼い始めたかと言うと、ひんやりしているからです。僕は昔から人の体温が苦手で、もちろん動物の体温も苦手で、でもコミュニケーションはとりたいってワガママで、ヘビは最高のパートナーということになるのです。

君との手紙を続けていたのもそういうことなんでしょうかね。人との会話は続かない僕でしたが、手紙だけは続けられたものでした。


僕が人の体温がダメな人間だから、君とは出逢わない世界に今いるんでしょうか。いやもちろん、会おうと思えば会えますが。

もしも僕が人の体温が平気だったら、君とは手紙でなくて出会っていたのかもしれませんね。そんなパラレルワールド


あの頃君の手紙はサプリメントでした。今もそうなりそうです。まだやりとりしてくれると嬉しいです。ちょっぴり雨が降っています、君は大丈夫ですか。僕は、ギリギリ、大丈夫です。


LETTER: 信号→ツナマヨ 私

どうもお久しぶりです。手紙、ありがとう。君のお手紙は実家に届き、母から私の元へきちんと送られてきました。最初は唐突な手紙に少し慄きましたが、読んでいるうちに嬉しくなりました。やっぱり手紙はいいものですね。文明の遺産です。


あ、でもちょっと私は怒っています。君は私を覚えていなかったと言いましたね?失敬な。君は信号の紳士を見る度に私を思い出したりはしなかったのですか。

私もあのやりとりのことはよく覚えていませんが、君について覚えていることがあります。君は当時、君の言葉で言えばしょうもない日々を過ごしていたようですが、ただその中でもクラスメイトの宮くんは面白くて好きだったようで、「宮はツナマヨおにぎりにバカみたいにマヨネーズをかけて、結局かけすぎてしょっぱいと泣いて、またその涙でしょっぱくなって泣いて、を繰り返すバカなんだけど、僕はそれで今世紀最大に笑いました」って、書いてたの、覚えてます。(この文は私も当時好きで何回も読み返していたから、多分一字一句間違えていませんよ。)

あれから私はコンビニでツナマヨおにぎりを買う時、あ、彼はまだ宮くんの涙に大笑いしてるのかしらと、思い出すようになってしまいました。君は(宮くんもですけど)何気に私の日常で息してるんですよ、今でも。

だから君は私を覚えてないなんて、ちょっとショック〜〜…ですよ!

宮くんとはまだ仲良くやっていますか。


さて、信号の話ですが。あ、その前に君の手紙の話ですが。君は私を面白かったなんて書いてましたけど、君も相当面白い、というか変ですよ。文通のリフォーム、の意味がよくわかんなかったし、住所のことをアドレスって言い方をするのも、わざわざな人だなあと、思いましたよ。私は手紙を読みながらずっと、クスクス笑っていました。

信号の話、半分意味わからなかったですけど、半分、意味わかりました。点滅の奥に人がいるってところ。あれは素敵ですね。

私たちの日々は、私たちのよく知らない人々によって構成されて守られているんだよなって、思います。とか言って私たちも、本当はよく知らない間柄ですね。あの中学二年の約半年間の、手紙の中だけの関係。それが今の私たちの日々を構成してるってことですかね。不思議ですね。あ、宮くんもかな。


信号の紳士はもう、心惹かれません。私は飽き性なので。今は、10年くらい飾られたままの、理髪店の看板に写ったカットモデルの女の人のことをずっと考えています。彼女、今何してるのかしら。というか、何してた人なのかしら。彼女はこの看板、今見たら、どんな気持ちになるのかしら、なんて。


君に応じて書いてみたら、私もなかなか、散文ですね。手紙はむずかしい。今度があれば、君のペットのはなしを。仕事はいいです。


あ、うんどうかい。君が勝ったと信じる方が勝っているんじゃないでしょうか。それでいいと思います。赤組が勝つ世界線も白組が勝つ、引き分ける、雨天中止、の世界線も、本当はあるんだと思いますよ。私はパラレルワールド、あると思います。だから、わからないものは、君の信じる結末でいいんじゃないですか?


てことは、私たちが文通しない世界線もあるんでしょうかね。不思議。文通しなかったらどうなんでしょう。一生お互い知らないままの世界?それとも身近で、顔見知りの世界?それも想像するとわくわくしますね。


あー、まとまりがない。しょうがない。君の手紙は届いたから、きちんとお返事お届けします。


ぱ。